日本人のワーホリは、実はコロナ前を超えている——それでも順位が4位から7位に落ちた理由

日本人のワーホリは、実はコロナ前を超えている——それでも順位が4位から7位に落ちた理由

「最近、ワーホリに行く日本人が減っている」——そう聞いたことがあるかもしれません。

データを見ると、これは事実ではありません。オーストラリア内務省が公表している11年分の統計によれば、日本国籍者へのワーキングホリデービザ発給は、コロナ前の水準を大きく上回っています。ニュージーランドも、英国も同じです。

それでも、オーストラリアの国籍別ランキングで日本は4位から7位へ後退しました。増えているのに、順位は下がった。

この記事では、各国政府が公表している発給統計をもとに、何が起きているのかを整理します。日本の留学エージェントが公開している「人気国ランキング」の多くは自社の申込数や体感に基づくもので、出典が示されていません。ここでは政府統計だけを根拠にします。


日本人のワーホリ渡航は、減っているのですか?

減っていません。コロナ前の水準を上回っています。

オーストラリア内務省が公表する日本国籍者へのサブクラス417ビザ発給件数を、11年分並べると次のようになります。

年度発給件数
2014-1511,481
2015-1612,304
2016-1711,061
2017-1810,987
2018-1911,933
2019-208,089
2020-211,558
2021-225,170
2022-2314,398
2023-2417,095
2024-2516,182

集計期間は各年7月1日〜翌年6月30日。出典:2014-15〜2019-20年度はDepartment of Home Affairs(2020)情報公開請求開示資料、2020-21年度以降はDepartment of Home Affairs(2025)。

コロナ前の2018-19年度は11,933件でした。2024-25年度は16,182件です。36%増えています。

2014年から2019年にかけて、日本人の発給数は1万1千件前後で安定していました。それがコロナで1,558件まで落ち込み、2022-23年度に14,398件へ急回復。2023-24年度に17,095件でピークを打ち、直近の2024-25年度は16,182件です。

つまり、ピークからは減った。しかしコロナ前より多い。これが正確な姿です。

ニュージーランドでも同じことが起きている

ニュージーランド移民局のデータでも、傾向は一致します。

年(暦年)日本国籍者全国籍合計
20162,77869,756
20172,58669,189
20182,49065,910
20192,67959,208
202069314,835
202142903
20221,32374,910
20233,09045,264
20244,30848,345
20253,81344,553

出典:Immigration New Zealand(2026)「Migration Data Explorer: W1 Work Visa Decisions」。個人特定を防ぐため、3を底とするランダム・ラウンディング(確率的な丸め処理)が適用されている。

コロナ前の2019年は2,679件、2025年は3,813件です。42%増えています。

2024年の4,308件がピークで、2025年は3,813件へ減少しました。オーストラリアと同じく「ピークアウトしたが、コロナ前より多い」という形です。

英国は、2024年に2.6倍へ急増した

英国のユース・モビリティ・スキーム(YMS)は、変化がさらに劇的です。

年(暦年)YMS発給総数日本国籍者日本の割合
20207,96188511.1%
20218,3051,49618.0%
202216,7901,2637.5%
202322,5858863.9%
202424,3062,2769.4%

出典:UK Home Office / UK Parliament(2025)「Youth Mobility Scheme — Written questions HL5212」(Entry clearance visas granted outside the UK, Vis_D02)

2023年の886件から、2024年は2,276件へ。2.6倍です。

理由は制度の変更にあります。2024年1月31日、日本国籍者に対するYMSの年間枠が1,500名から6,000名へ拡大され、同時に長年続いていた抽選制が廃止されました(UK Home Office,2024)。落選のリスクがなくなり、通年で申請できるようになった結果が、この数字です。

制度が変われば、日本人は動く。これは重要な示唆です。


なぜ「減っている」と言われるのですか?

直近1年だけを切り取ると、確かに減っているからです。

直近前年増減
オーストラリア16,182件(2024-25年度)17,095件−5.3%
ニュージーランド3,813件(2025年)4,308件−11.5%

前年比だけを見れば減少です。ただしこれは、コロナ禍で行けなかった人がまとめて渡航した反動増が一巡した結果と読むのが自然です。

2022年から2024年にかけての急増は、本来なら3年に分散していたはずの渡航が短期間に集中したものでした。その山を越えたあと、コロナ前より高い水準で落ち着きつつある——長期データはそう示しています。

2年の比較だけで「日本人のワーホリ離れ」と結論づけるのは、統計の読み方として誤りです。


では、なぜ日本の順位が4位から7位に落ちたのですか?

日本が減ったからではありません。他国が急増したからです。

オーストラリアのサブクラス417ビザについて、国籍別の発給数ランキングを2年分並べます。

2024-25年度(2024年7月〜2025年6月)

順位国籍発給件数構成比
1英国79,41231.2%
2フランス41,93716.5%
3アイルランド24,1659.5%
4イタリア19,9667.8%
5韓国17,4856.9%
6台湾16,5256.5%
7日本16,1826.3%
8ドイツ15,9216.2%
9カナダ6,3172.5%
10オランダ4,0511.6%
全国籍合計254,905100%

2023-24年度(2023年7月〜2024年6月)

順位国籍発給件数構成比
1英国47,23824.4%
2フランス30,00415.5%
3アイルランド21,99711.3%
4日本17,0958.8%
5韓国14,9847.7%
6イタリア14,6627.6%
7台湾14,5607.5%
8ドイツ13,5507.0%
9カナダ5,4712.8%
10オランダ3,7912.0%
全国籍合計193,922100%

出典:Department of Home Affairs(2025)「Working Holiday Maker visa program report: 30 June 2025」

全国籍合計が193,922件から254,905件へ、31%増えています。そのなかで日本だけが5.3%減りました。だから順位が下がった。

伸び幅を見ると、構造がはっきりします。

国籍前年比
英国+68.1%
フランス+39.8%
イタリア+36.2%
ドイツ+17.5%
韓国+16.7%
カナダ+15.5%
台湾+13.5%
アイルランド+9.9%
オランダ+6.9%
日本−5.3%

上位10か国のうち、前年より減ったのは日本だけです。

英国の68.1%増には制度上の理由があります。2023年7月と2024年7月に段階的に施行された豪英自由貿易協定により、英国籍者はワーホリの年齢上限が30歳から35歳に引き上げられ、2年目・3年目のビザ取得に必要だった農作業などの指定労働要件が完全に撤廃されました(Department of Home Affairs,2025)。日本国籍者にはこの緩和は適用されていません。

つまり、順位低下の一因は日本人の行動ではなく、他国に与えられた制度上の優遇にあります。


海外旅行全体は、コロナ前に戻っているのですか?

戻っていません。ワーホリだけが先に超えました。

ここが、この記事で最も注目すべき対比です。

指標コロナ前直近回復率
日本人出国者数2,008万人(2019年)1,301万人(2024年)65%
海外在留邦人(長期滞在者)89万1,473人(2019年)70万9,684人(2025年)80%
豪州へのワーホリ11,933件(2018-19年度)16,182件(2024-25年度)136%
NZへのワーホリ2,679件(2019年)3,813件(2025年)142%

出典:法務省出入国在留管理庁(2025)「出入国管理統計」、外務省(2026)「海外在留邦人数調査統計」、Department of Home Affairs(2025)、Immigration New Zealand(2026)

海外旅行に出る日本人は、まだコロナ前の3分の2しか戻っていません。海外に住む日本人(長期滞在者)も8割の水準です。

それにもかかわらず、ワーホリだけがコロナ前を4割上回っている。

この対比が示すのは、「日本人が内向きになった」という一般論では説明できない現象です。海外へ出る人の総数は減っているのに、若者が1年単位で働きながら滞在する選択は増えている。円安と国内外の賃金差が背景にあると推測されますが、この因果を証明する政府統計は公表されていません。ここは断定を避けます。


日本人のワーホリには、どんな特徴がありますか?

現地に残り続ける人が、急増しています。

オーストラリアのビザ内訳を見ると、日本人の行動が変化していることがわかります。

ビザ区分2024-25年度2023-24年度増減
ファースト(1年目)10,920件14,290件−23.6%
セカンド(2年目)4,126件2,579件+60.0%
サード(3年目)1,136件226件+402.7%
合計16,182件17,095件−5.3%

出典:Department of Home Affairs(2025)

新しく渡航する人は23.6%減り、3年目に入る人は5倍になりました。

オーストラリアでセカンドビザを取るには、指定された地域で3か月の指定労働が必要です。サードビザにはさらに6か月が必要になります(Department of Home Affairs,2026)。つまりサードビザ1,136件という数字は、農業や建設の現場で合計9か月働いた日本人が、それだけいたということです。

1年で帰る「体験」から、3年かけて稼ぐ「就労」へ。日本人のワーホリの性質そのものが変わりつつあります。


これから渡航する人は、何を考えるべきですか?

「行く人が多いかどうか」より、「その1年で何を持ち帰るか」です。

ここまでのデータは、渡航先選びの参考にはなります。しかし、人気の国に行けば成果が出るわけではありません。

思い出してほしいのは、オーストラリアで語学学校に通えるのは最大4か月という事実です(Department of Home Affairs,2026)。残りの8か月は、英語を学ぶ時間ではなく、働く時間になります。

そして3年目まで滞在する人が5倍に増えたということは、それだけ長く現地の労働市場にいるということでもあります。そこで身につくのは、業務に必要な範囲の会話です。議論したり、自分の考えを組み立てて伝えたりする力とは、別のものです。

海外に行けば自然に力がつく、という前提そのものを疑う必要があります。867の研究を統合したメタ分析は、「環境に浸すだけ」のモデルの効果が低いことを示しています。明示的な指導と対話を組み合わせたときに初めて成果が出る——詳しくは権威ハブ記事で解説しています。

[内部リンク: 権威ハブ記事(留学 批判的思考)]

18年間、留学の現場を見てきて確信していることがあります。ワーホリで成果を出す人は、渡航前にすでに英語の土台を作っている人です。現地で英語を身につけようとした人ではありません。

就学期間に上限がある以上、限られた学習期間をどう使うかは渡航前に決まります。

渡航先ごとの条件については、32か国の全リストをまとめた記事をご覧ください。

[内部リンク: ワーホリ記事#1(ワーキングホリデー 国一覧)]

自分がワーホリに向いているタイプなのか、それとも先に準備が必要なタイプなのかを確かめたい方は、こちらの記事が参考になります。

[内部リンク: ワーホリ記事#14(ワーホリ 向いている人)]


よくある質問

Q1. ワーホリで一番人気の国はどこですか?

日本人の渡航先としては、政府統計で実数が確認できる範囲ではオーストラリアが最多です(2024-25年度に16,182件)。次いでニュージーランド(2025年に3,813件)、英国(2024年に2,276件)となります。ただしカナダなど発給実績を公表していない国もあるため、全32か国の順位は確定できません。

Q2. 日本人のワーホリは減っているのですか?

長期で見ると減っていません。オーストラリアはコロナ前の2018-19年度(11,933件)と比べて2024-25年度は36%増、ニュージーランドは2019年比で42%増です。直近1年だけを見ると前年割れですが、これはコロナ後の反動増が一巡した結果と考えられます。

Q3. オーストラリアのワーホリで日本の順位が下がったのはなぜですか?

他国が急増したためです。2024-25年度の全国籍合計は前年比31%増でしたが、日本は5.3%減でした。特に英国は68.1%増で、これは豪英自由貿易協定により英国籍者の年齢上限が35歳へ引き上げられ、2年目以降の指定労働要件が撤廃されたことが背景にあります。日本国籍者にこの緩和は適用されていません。

Q4. 英国のワーホリはなぜ急増したのですか?

2024年1月31日に制度が変更されたためです。日本国籍者向けの年間枠が1,500名から6,000名へ拡大され、同時に抽選制が廃止されました。その結果、日本国籍者への発給は2023年の886件から2024年の2,276件へ、2.6倍に増えています。

Q5. 世界で一番ワーホリに行っているのはどこの国の人ですか?

オーストラリアのデータで見ると英国です。2024-25年度に79,412件が発給され、全体の31.2%を占めました。次いでフランス(41,937件)、アイルランド(24,165件)と続きます。ただしこれはオーストラリア1国の統計であり、世界全体を集計した公式データは存在しません。


この記事を書いた人

増本 圭(ますもと けい)

国際教育に携わって18年。うち12年はアメリカ留学の支援を担当し、現在はフィリピン留学コンサルタント「CebuGo」を運営しています。

自身も社会人になってから英語を学び直し、最初の留学先はフィリピンでした。その後オーストラリアとカナダで学んだ経験から、大人の初学者がつまずくポイントを実感を持って理解しています。

現在は、海外留学環境が学習者の批判的思考の発達にどう影響するかをテーマに、人材育成学会で博士研究に取り組んでいます。NPO法人留学協会所属。日本語・韓国語・英語のトリリンガル。


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参考文献

Department of Home Affairs, Australian Government. (2020). Visa applications granted where financial year between 2014-15 to 2019-20 by citizenship (FOI request 20/10/00176, DD-3825.02). https://www.homeaffairs.gov.au/

Department of Home Affairs, Australian Government. (2025). Working Holiday Maker visa program report: 30 June 2025. https://www.homeaffairs.gov.au/research-and-stats/

Department of Home Affairs, Australian Government. (2026). Working Holiday visa (subclass 417). https://immi.homeaffairs.gov.au/visas/getting-a-visa/visa-listing/work-holiday-417

Immigration New Zealand. (2026). Migration Data Explorer: W1 work visa decisions. https://www.immigration.govt.nz/

UK Home Office. (2024). UK and Japan expand mobility schemes for young people. https://www.gov.uk/government/news

UK Parliament. (2025). Youth Mobility Scheme: Written question HL5212. https://questions-statements.parliament.uk/

外務省. (2026). 海外在留邦人数調査統計. https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/

法務省出入国在留管理庁. (2025). 出入国管理統計. https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/


本記事の統計は2026年8月時点で各国政府の公表資料を確認したものです。集計期間は国によって年度と暦年が異なるため、単純な合算はできません。数値は各国政府の公表時点のものであり、遡及修正されることがあります。

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